ROOM FOR LIVING
私たちの生活は、壁によって形成されています。私たちのほとんどは寝室で眠り、
バスルームで入浴し、キッチンで料理をするなど、機能を部屋名で示しています。
家庭のルールに則った生活を営んでいるのですよね。
一方、住まいとは歴史的に、社会状況の変革に伴い、
流動的な変化を遂げてきています。中世では、部屋内部の
すべての活動は、暖炉を中心として行われていました。
(オープン炉がモダンコンセブトとされている事はさておき。)
200年前には自分の寝室に客人を招き入れる事が礼儀にかなった行いだったし、
100年前には住まいにダイニング・ルームは欠かせないものでした。
時代は流れ、ともに分割の役割を果たしていた壁は比喩的にも消えて行きました。
戦後初めて私たちが使い始めたリビング・ルームという用語は、
それまでの住まいに対する価値観に混乱を招きました。
この噯味な意味を持つ室内が定着する以前は、
今日のリビング・ルームに当たる部屋には、特定な機能を与えられ、
同時にそれが家主の社会的地位をも反映するよう、
明確に定義付けられていきました。大雑把に区分けすると、裕福な家庭には
ドローイング・ルーム(文字通り引き下がる部屋)
があり、家柄は良いが裕福でない家庭には前室がありました。
どちらにも、一種触れる事の出来ない、よそ行きな響きがあり、
リビング・ルームという用語は、階級意識や性差別の希薄化といった、
当時の社会によりよく受け入れられていたようでした。
この呼び名には平等主義的な響きが含まれていた一方、
一般的にはその噯味で気軽な定義付けを耐え難く捕えていましたが、
単に住むための部屋とは対照的に、リビング・イン(暮らしの中に住む) という、
奇妙なコンセプトはゆっくりとそれまでのドローイング・ルームや
前室からキッチンにまで広がっていった。1980年代には、“リブト・イン・ルック”
と説明されるスタイルで部屋を装飾する事が最高の賛辞となり、
したがって実用的なライフスタイルが流行の要因となっていきました。